脊椎内視鏡手術について
◇このページの主な内容
①脊椎内視鏡手術とは
従来のオープン手術と同じ手術内容を、内視鏡を用い8~18mmの外筒を通して行う手術です。術者は4K~フルHDの大きなモニターを見ながら、術野を拡大して手術を行います。オープン手術に比べ、創が小さく筋肉など周囲組織への侵襲が少ないため、術後の痛みが軽く、早期離床・退院・社会復帰が可能です。また術後の細菌感染のリスクが少ないのも特徴です。
②内視鏡下椎間板摘出術(MED)
MEDはMicro Endoscopic Discectomyの略で、16~18mmの外筒と内視鏡を用いて、椎間板ヘルニアを摘出する方法です。1996年Foley、Smithらにより開発され、当院には2002年より導入されており、20年以上の実績があります。1.6cm程の皮膚切開で手術を行います。脊椎内視鏡手術では最も標準的な術式ですが、多くの実績があり、また非常に汎用性が高く、全ての腰椎椎間板ヘルニアに対応が可能です。術後翌日より歩行が可能で、術後6日目の退院スケジュールとしていますが、希望があれば術後3~5日程の退院も可能です。
③内視鏡下椎弓形成術(MEL)
MELはMicro Endoscopic Laminoplastyの略で、MED法に準じ16~18mmの外筒と内視鏡を用いて、腰部脊柱管狭窄症や腰椎変性すべり症に対し、神経の除圧を行う術式です。従来のオープン手術では、2椎間の除圧に対し、8~10cm程の皮膚切開が必要ですが、MELであれば1.6~2cmで行えます。術後2日目より歩行が可能で、術後8日目の退院スケジュールとしていますが、希望があれば術後5日程の退院も可能です。
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④内視鏡下頚椎椎間孔拡大術(MEF)
MEFはMicro Endoscopic Foraminotomyの略で、MED法に準じ16~18mmの外筒と内視鏡を用いて、頚椎椎間板ヘルニアや頚椎症性神経根症に対し、神経の除圧を行う術式です。従来のオープン手術では、2椎間の除圧に対し、5~8cm程の皮膚切開が必要ですが、MEFであれば1.6~2cmで行えます。術後翌日より歩行が可能で、術後6日目の退院スケジュールとしていますが、希望があれば術後3~5日程の退院も可能です。
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⑤全内視鏡下脊椎手術(FESS)
FESSはFull Endoscopic Spine Surgeryの略で、MEDよりさらに細い8mmの外筒と内視鏡を用いて行う全内視鏡手術の総称です。90年後半Yeungらにより開発され、当院には2022年より導入されております。8mm程の皮膚切開で手術を行います。FESSは脊椎内視鏡手術では最も新しい術式といえ、大部分の腰椎椎間板ヘルニアに対応できます。術後4時間より歩行が可能で、術後2日目の退院スケジュールとしています。忙しい方は、週末を利用した手術が可能です。また、内視鏡が非常に細いため、局所麻酔(+鎮静)でも手術が可能であり、持病等の理由で全身麻酔が困難な患者さんにも適応が広がりました。また頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症に対する全内視鏡下椎間孔拡大術も行っています。
⑥脊椎内視鏡手術の年別手術内訳
MED:内視鏡下椎間板摘出術 |
⑦脊椎内視鏡手術の年齢分布(2022年度)
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⑧日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医
脊椎内視鏡手術は低侵襲で有用な治療手段である一方、術野が非常に狭く、特殊な手術操作を必要とするなど技術要求度が高く、手術上達に時間がかかります。そのため、手術を安全に普及させるため、脊椎内視鏡下手術技術認定医制度が制定されました。技術認定医は、整形外科専門医の資格に加え、整形外科学会認定脊椎脊髄病医を取得し、一定数の手術症例報告・内視鏡関連学会発表・モデルボーンや生体豚での技術講習会を経て、実際の脊椎内視鏡手術ビデオを2名の審査員によって点数化され80/100点以上で認定されます。脊椎外科関連の認定医制度の中では最も難関な資格の1つとされています。2024年現在、日本整形外科学会専門医は20,671名、その中で脊椎手術の指導的立場である脊椎脊髄病学会指導医は1,823名ですが、脊椎内視鏡下手術・技術認定医は全国で204名しかおりません。当院には3名の技術認定医が在籍し、病院全体の脊椎内視鏡手術への指導・監督を行っており、安全な脊椎内視鏡手術に努めております。どうぞ安心して相談ください。